アンコール前の最後の曲、サビに入る直前。モニターに温度警告のマークが出て、そのまま録画が止まった。

8月、キャパ300人ほどのライブハウス。フロアは満員で、空調はほぼ負けていた。自分の立ち位置はPA卓の横、人の熱気がちょうど溜まる場所だった。
ミラーレスで長回しをする以上、熱停止はいつか必ず来る。問題は「来たときに何が残っているか」だ。
ライブ撮影でカメラが熱停止する原因は「本体の中」だけではない
熱停止というと、カメラの性能の問題だと思われがちだ。半分は合っている。小さなボディに高画素センサーと高ビットレートの記録処理を詰め込めば、熱は逃げ場を失う。
ただ、現場で止まったときを振り返ると、カメラ以外の要因がかなり大きかった。
- 満員のフロアの熱気(人の体温は侮れない)
- 照明の直撃。ステージ前方のカメラは特に
- 背面液晶を閉じたまま使っていた
- バッテリーを本体に入れたまま長時間、しかも給電しながら回していた
- 黒いレインカバーをかけっぱなしにしていた(雨も降っていないのに)
最後のは完全に自分のミスだ。前日の野外案件のカバーを外し忘れていた。黒い布で包んだカメラを照明の下に置けば、そりゃ止まる。
熱停止は「カメラが弱い」のではなく、「熱の逃げ道を全部ふさいだ」結果であることが多い。
熱停止対策の選び方:止めない工夫と、止まっても残る工夫
対策は大きく2種類に分けて考えている。
ひとつはカメラ本体の発熱を減らす・熱を逃がす方向。もうひとつは止まっても映像を失わない方向だ。
前者だけだと、どれだけ頑張っても「止まるかもしれない」不安が残る。後者まで用意して、はじめて本番中に音楽に集中できる。
以下、自分が実際に効いた順に並べる。
1位:外部レコーダー(外部モニター)に収録する
いちばん効いたのはこれだ。正直、これ一択と言っていい。
カメラ内部のカードに記録するのをやめ、HDMI出力を外部レコーダーで収録する。カメラ側は映像を出すだけになるので、記録処理の発熱がまるごと外に出る。機種によっては内部記録をオフにした状態のほうが、明らかに長く回る。
しかも、外部レコーダー側でも録っていれば、万が一カメラが止まってもそこまでの映像は確実に残る。内部記録と外部収録を同時に回す「二重録り」にしておけば、カード側のトラブルにも強くなる。
ライブハウスの暗いフロアでは、モニターとしての見やすさもありがたい。内蔵液晶のピント確認がいかに当てにならないかは、外部モニターは必要?カメラ内蔵液晶を信じて、ピンボケの誓いのキスを撮った話に書いたとおりだ。
欠点は荷物とケーブルが増えること。HDMIケーブルは抜けやすいので、ケーブルクランプで本体側をしっかり固定しておく。熱で止まるより、ケーブルが抜けて止まるほうが悔しい。
2位:外部給電でバッテリーを本体から追い出す
バッテリーは、使っている最中にそれ自体が熱を持つ。それがボディの中にあるわけだから、熱源をひとつ抱えて撮っているのと同じだ。
USB給電やダミーバッテリーで外から電源を取ると、本体内の熱源がひとつ減る。体感でも、同じ設定で回せる時間が伸びた。バッテリー交換のタイミングを気にしなくていいのも、2時間超えのワンマンでは大きい。
給電元は、カメラから少し離した位置に置く。三脚の脚にマジックテープで固定するのが自分の定番だ。モバイルバッテリー自体も充電・給電中は温かくなるので、カメラに密着させると意味が薄れる。
給電周りのトラブルについては披露宴クライマックスでカメラが落ちた10秒間でも書いた。ケーブルの接触不良で落ちたこともあるので、L字のケーブルを使って抜けにくくしている。
3位:カメラ用の冷却ファンを付ける
背面液晶の裏や底面に取り付ける、小型の冷却ファンも出回っている。UlanziやSmallRigなどから、カメラ専用のものがいくつか出ている。
効果はある。ただし順位を3位にしたのは理由がある。
- ファンの動作音を内蔵マイクが拾うことがある(ライブ音源を別録りしていれば問題は小さい)
- ファン自体の電源が必要で、ケーブルがまた1本増える
- 満員のフロアでは、そもそも周りの空気が熱いので冷却効果が落ちる
それでも、外部レコーダーを持ち込めない小規模な現場や、手持ちで動き回るカメラには付ける価値がある。
ちなみにシネマカメラ系のボディは冷却ファンを内蔵しているものが多い。熱停止に悩み続けるなら、最終的にはそっちに乗り換えるのが根本解決になる。お財布は根本的に解決しないが。
3つの対策の比較
| 対策 | 熱停止の防止 | 止まった時の保険 | 荷物の増え方 | 向いている現場 |
|---|---|---|---|---|
| 外部レコーダー収録 | 効果大(内部記録オフ時) | あり(そこまでの映像が残る) | 多い | 定点カメラ・長尺のワンマン |
| 外部給電 | 効果中 | なし | 少ない | ほぼ全部 |
| 冷却ファン | 効果中(環境に左右される) | なし | 少ない | 手持ち・小規模ハコ |
組み合わせるなら「外部給電+外部レコーダー」が最強だ。自分は定点のメインカメラにはこの2つを必ずセットにしている。
お金をかけずにできる熱停止対策(設定と置き方)
機材を買う前に、これだけは見直しておきたい。
背面液晶を開いておく。 ボディから液晶を離すだけで、背面の熱が抜けやすくなる。閉じて使うクセがある人は意外と多い。
温度上限の設定を確認する。 一部のカメラには「自動電源OFF温度」を高めに設定するメニューがある。三脚に据えて手で持たないなら、高い側に設定しておく。手持ちで使うときは低温やけどに注意。
記録形式を見直す。 4K60pの高ビットレートで回す必要が本当にあるのか。ライブの定点カメラなら、4K30pや、場合によってはフルHDで十分な場面もある。
照明の真下を避ける。 機材席の位置が選べるなら、ムービングライトの直撃を受けない場所を選ぶ。リハの段階で照明さんに一言聞いておくと、本番の照明の向きを教えてもらえることがある。
それと、開場前にカメラの電源を入れっぱなしにしない。客入れの30分で、本番前にすでに温まりきっていたことがある。本番開始の数分前に電源を入れるだけで、後半の余裕が変わる。
現場トラブル全般の応急処置は撮影現場の機材トラブル対処法|開演5分前にレンズが曇った日にまとめている。
まとめ
熱停止はカメラの性能の話に見えて、実は運用の話だ。止まる前提で、止まっても残る仕組みを作っておく。それだけで、ラスト曲のサビで血の気が引く夜はなくなる。
ちなみにあの日止まったカメラは、レインカバーを外したら終演後の物販中ずっと元気に動いていた。撮るものはもう何も残っていなかったけれど。
この記事を書いた人
映像制作歴8年、ブライダル・MV・ライブ撮影を中心にこれまで300件以上の現場に立ってきた映像クリエイター。撮影から編集まで一貫して手がけ、現場でしか分からないリアルな機材選び・編集ノウハウを発信しています。



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